『トビラ』
最初の一歩が一番大変。
『トビラ』
-----ここから-----
目の前には古びたトビラ。
君はそっと、手を掛ける。
かすかに見える赤い光は、
夜明けかそれとも夕焼けか。
目の前にある古びたトビラ、
君は笑って、開け放つ。
かすかに見えた赤い光は、
遠い向こうのどこかへ消えた。
トビラの向こうに続く道。
ただひたすらに続く道。
光はどこにも無いというのに
それでも君はにこやかだった。
トビラの向こうへ続く道へと
一歩踏み出し、振り返る。
「ごめんごめん忘れていたよ」
君は僕へと問いかける
「道の果てには光があると、
僕は信じているけれど。
保障はしない。強制もしない。」
消えた笑顔と差し出された手。
――さあ、君はどうするの?
伸びゆく道が行き着く先など
到底想像できないが、
僕にもかすかに見えたんだ。
遠く輝く一等星が。
君が静かに伸ばす手を、
震えを抑えて握り締め、
無理やり足を突き出すと、
君はにっと笑ったね。
もう遠くに見える古びたトビラ。
きっと戻ることもない。
かすかな光にさらされた、
その向こう側は灰色だった。
0 件のコメント:
コメントを投稿